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家族信託に関する間違ったご認識について解説(検討時)
家族信託は、信託法が改正され一般個人が使えるようになって15年以上が経過していますが、まだまだ一般個人の方に周知されているとは言えない状況です。正しくご認識、ご理解をいただけますと大変使い勝手のよい方法です。しかし、間違って理解されているために、お客様に一番フィットする方法にもかかわらずご検討されない、ご利用されないケースがあるようです。今回は、その一部をご紹介します。
(1)記憶力が落ちた場合、認知症の場合に信託契約を結べない
認知症になったら、または認知症と診断されたら、家族信託の契約はできないと思われているケースがあります。記憶力が落ちて物忘れなどで認知症の疑いがある方であっても、さらに認知症と診断された方であっても家族信託の契約が締結できる場合はあります。
日常生活を送られている場合には、信託の主旨・目的などのポイントをご理解いただける場合もあり、この場合は契約締結できます。
状況が進みますとできなくなくリスクが増大しますが、まさに家族信託が必要なケースです。
急ぎ専門家に相談されることをお薦めします。
(2)家族信託契約締結には3ヶ月以上の長い日数がかかる
準備の時間に影響を与えるのは
- 内部的要因:ご家族状況(ご家族内の合意調整)やご希望内容(対象財産の選定や委任業務の選択など)
- 外部的要因:金融機関(家族信託用の専用の口座開設や借入検討など)、公証役場の混み具合
などにより変わってきます。
とくに内部的要因では、保有資産や日常生活の収支状況を確認し老後生活費の算定と資産承継に関するお考えについて家族と相談したうえで専門家を交えて検討しますのでお時間を要します。
しかし、親御様がご高齢の場合、数か月の期間でも認知症の進行による判断能力の低下のリスクががあります。
緊急性が高い場合、お打合せの期間を詰めるなどして、私文書で2週間から3週間で信託契約書を締結する場合もあります。また、シンプルな内容にして信託契約公正証書まで実行する場合もあります。
対策すべき、したいとお考えであれば専門家に相談すべきかと思います。
(3)金銭管理は銀行・信金で専用の「信託口口座」を作成する必要がある
子供様が親御様の金銭を管理します。その際に銀行・信金で「信託口口座」※という家族信託専用の口座の開設が必須だと聞いておられる場合があります。確かに専用ですが、義務ではありません。こちらは開設可能な銀行・信金は限定されています。
また、口座開設に時間を要します。上記(2)の場合や近くに開設できる銀行・信金がなければ子供様が自身の口座と分けて新たに普通口座を開設いただきます。それを専用として分別管理をいただければ対応可能です。
※「信託口口座」:財産管理を担う子供様は金融機関にて(「田中父郎 受託者 田中小太 信託口」という子供様が印鑑を届け出る口座ですが親御様の名前や信託という文字が口座名に入っている口座)
以上、今回は家族信託の検討時に関する間違ったご認識について解説しました。とくに記録力がかなり落ちた状態の場合、ご検討をあきらめたというケースは多いのですが、まずは家族信託の専門家にご相談されることお薦めします。ぎりぎりでも家族信託ができた場合とそうでない場合ではその後の財産管理の柔軟性には大きな違いが生じます。
家族信託の利用数の統計は全体では取れないものですが、不動産の信託登記のデータは法務局が公表しています。それによるとここ数年は毎年、前年比1.5倍の伸びとなっています。
当事務所でも家族信託のお問い合わせ、ご相談が増えています。
家族信託を効果的に活用するためには、対象とすべき財産を見極め、必要十分な体制をご案内し、将来リスクを考慮した提案が必要です。
当事務所は、渋谷駅の1つ隣の池尻大橋駅近く(池尻は世田谷区、大橋は目黒区)に事務所を構えております。親御様が地方で子供様が東京、その反対のケースも対応しております。家族信託・遺言・相続のご相談は、お気軽に若尾行政書士事務所までご相談ください!